雨水貯留浸透施設や雨水利用施設などの開発・施工・販売を行っている秩父ケミカル株式会社の北関東事業所計画。
建設地は水戸市内の市街化調整区域内にあり、開発許可が必要な計画となった。
新しい北関東事業所では、台風やゲリラ豪雨などによる浸水を防ぐことを目的とした新しい雨水の研究を行う建築物が求められ、研究内容の根本となる雨水の集水方法や雨水利用と雨水貯留の状況が分かりやすく多くの人々に伝えられる配置や形態の具体化と、雨水によって育った木材の積極的利用により自然環境を扱う会社の事業所を表現することを考慮しデザインを検討した。
事務所棟と倉庫棟からなる建築は、それぞれに役割をもたせ共に大きな片流れの1枚屋根を採用することで雨水集水を分かりやすく表現している。
事務所棟は建築物に降りそそいだ雨水をダイレクトに貯留槽(製品名:ニュープラくん)へ集水。集水状況がわかる点検口の他、ガラスボックスを採用し貯留状況の見える化を図った。
倉庫棟は、降りそそいだ雨水を全て研究に利用。雨樋から研究用タンクや装置によりデータを集積。データを取った雨水は全て雨水利用槽(製品名:プラスプール)に集水し、雨水は手押しポンプや散水栓、トイレで利用。雨水利用の状況が分かるよう建築に取り込んでいる。大きな集水装置は、建物の裏側に配置し周辺環境に違和感を感じさせない配慮をするなど建築と一体でデザインし配置した。
建築物は、自然環境を扱う会社のオフィスとして、雨水で育った木材を積極的に利用したいと考え事務所棟、倉庫棟共に大断面木材による木造平屋建建築とした。
外部デザインは、市街化調整区域に建つ建築として、周辺環境に溶け込むシンプルな形態とし、大きな建築物とならないよう低勾配の屋根を採用することや、周辺への圧迫感を和らげる建物の配置や勾配の方向などを検討した。
外部仕上げは唐松の板張りと、窯業と金属のサイディングを使い分け、アースカラーを基本とした色彩により、周辺環境になじませつつ、素材感があり天気によって印象の変わる外観とした。
内部デザインは、唐松の板張りや木合板素地を採用し、空間に温もりと暖かさを与えている。また空間の広がりと、雨水集水屋根の大きさや形状を感じられるよう間仕切壁の上部は可能な限りガラスを採用した。
倉庫棟も木合板素地仕上を採用し倉庫空間に温もりを与えた。事務所棟より大きな空間となるため更に大きな断面の木材が必要となるが、中央に柱を設けることにより構造資材の軽減を図り環境配慮とコストバランスも同時にデザインしている。
建設地:茨城県水戸市
敷地面積:2,490.22㎡(内開発敷地999.89㎡)
建築面積:442.02㎡
延床面積:398.68㎡
規模:木造 1F
竣工:2022年12月
Power Photo By Ryota Atarashi